漢方薬は「何を飲むか」だけでなく、いつ・どう飲むかで続けやすさや実感が変わることがあります。
桂枝加芍薬湯は、お腹の張りを伴うしぶり腹(腹痛)や便通の乱れに用いられることがある漢方薬で、体質に合うとつらい症状の改善が期待できます。なお、漢方薬には番号が割り振られており、このお薬は60番となっています。
この記事では、基本の飲み方に加え、生じうる副作用や服用する際の注意点、などを分かりやすく説明します。本記事を読んだ方に桂枝加芍薬湯について知ってもらうことで、つらい症状を適切に治療するための一歩となれば幸いです。
桂枝加芍薬湯とは

出典:ツムラ
桂枝加芍薬湯は、お腹が張って苦しく、腹部膨満感を伴うしぶり腹や腹痛があるときに用いられる漢方薬です。『桂枝加芍薬湯』という名は、基本処方である『桂枝湯』に生薬の『芍薬』を加えたことを、そのまま表した処方名です。
便意があるのにすっきり出ない、排便後も違和感が残るといった不調に対して処方されることがあります。本漢方では、芍薬を中心に桂皮、大棗、甘草、生姜から構成されており、お腹の緊張をやわらげながら、状態を整えていくことを目指します。
医療機関で処方される桂枝加芍薬湯には、「ツムラ桂枝加芍薬湯エキス顆粒(医療用)」などがあります。日本では、同じ処方名の医療用漢方製剤が複数のメーカーから販売されています。なお、漢方製剤・生薬では、一般的な医薬品のような「先発医薬品」「後発医薬品」という区別はありません。
はなせる薬局 薬剤師なお、桂枝加芍薬湯は同じ処方名の医療用エキス顆粒が複数の製薬会社から販売されており、医師の判断で別のメーカーの製剤が使われる場合もあります。
桂枝加芍薬湯に期待できる効果
ここでは、桂枝加芍薬湯に期待できる効果を3つに分けてわかりやすく解説します。
しぶり腹・腹痛の改善
桂枝加芍薬湯は、腹部膨満感があり、しぶり腹や腹痛がある場合に用いられる漢方薬です。しぶり腹は、便意があるのに少ししか出ない、何度もトイレに行きたくなるといった状態を指し、腹痛を伴うこともあります。
このお薬では、こうしたつらさの背景にあるお腹の緊張をやわらげ、落ち着いて過ごせる状態へ整えることを目指します。
漢方薬は体質や体調との相性も関わるため、飲みながら変化を見ていくことが大切です。しんどさが続くときは、無理をせず医師に相談してください。
お腹の張り(腹部膨満感)を和らげる
桂枝加芍薬湯は、お腹の張り(腹部膨満感)が気になる症状に対して用いられる漢方薬です。お腹が張って苦しい感じがあると、食事が進みにくくなったり、気持ちまで落ち込みやすくなったりすることもあるでしょう。
桂枝加芍薬湯は、芍薬や桂皮などの生薬を組み合わせ、お腹のこわばりをやわらげることで、張りや痛みなどのつらい症状を整えていく漢方薬です。
はなせる薬局 薬剤師すぐに変化が出ない場合もありますので、焦って自己判断で調整せず、経過を見ながら続けることが大切です。
過敏性腸症候群(IBS)の方に処方されることがある
過敏性腸症候群は、検査で大きな異常が見つからないにもかかわらず、腹痛やお腹の張り、便通の乱れが続く状態を指します。ストレスや緊張がきっかけとなり、症状が強まる方も少なくありません。
桂枝加芍薬湯は、ストレスなどでお腹がこわばりやすく、腹痛や張り、排便後の不快感が出やすい場合に、お腹の緊張を和らげる効果が期待できます。症状のタイプによっては過敏性腸症候群(IBS)の方に処方されることもあります。
ただし、過敏性腸症候群(IBS)には便秘型や下痢型などいくつかのタイプがあり、合うお薬は人によって異なります。自己判断で決めつけず、今感じている症状を医師に伝えた上で選んでもらうと安心です。
桂枝加芍薬湯の基本的な飲み方・用法・用量
桂枝加芍薬湯の基本的な飲み方として、服用する用量やタイミング、飲み忘れた際の対処法について解説します。ぜひ参考にしてください。
通常は成人で2~3回に分けて服用
桂枝加芍薬湯は、通常、成人では1日2~3回に分けて服用します。1回あたりの量は、1日の服用回数に応じて調整されるため、生活リズムに合わせて続けやすい飲み方です。
年齢や体重、症状の程度によって量を調整する場合もありますが、自己判断で増やしたり減らしたりせず、医師から指示された内容を守ることが大切です。
はなせる薬局 薬剤師漢方薬は体調の影響を受けやすいため、服用を続けながら無理のないペースで様子を見ていくと良いでしょう。
服用するタイミングは食前または食間が理想
桂枝加芍薬湯は、食前または食間に服用することが一般的です。食前は食事の前、食間は食後およそ2時間前後を目安とし、胃の中が空に近いタイミングを指します。体調によっては、服用のタイミングを細かく気にすることが負担になることもあるかもしれません。
その場合でも、できる範囲で時間帯をそろえるだけで、習慣として続けやすくなります。飲むタイミングに迷ったときは、無理に判断せず、医師や薬剤師に相談すると安心です。
桂枝加芍薬湯の服用を忘れた場合は気づいた時点で1回分を飲む
桂枝加芍薬湯を飲み忘れた場合は、気づいた時点で1回分を服用するのが基本です。ただし、次の服用時間が近いときは、2回分をまとめて飲むことは避け、次の服用はいつも通り1回分を飲むようにしましょう。
飲み忘れが続く場合は、服用回数や時間帯について医師や薬剤師に相談し、続けやすい方法を一緒に考えていくと安心です。
桂枝加芍薬湯の副作用【発疹・かゆみ等】
桂枝加芍薬湯は比較的安全性の高い薬ですが、体質によっては以下のような症状が現れることがあります。
| 生じる恐れがある副作用 | 症状の特徴 |
| 発疹・発赤・かゆみ | 皮膚に赤みや発疹が出たり、かゆみを感じたりすることがある |
| 偽アルドステロン症(まれに) | 低カリウム血症に伴い、血圧上昇、ナトリウム・体液の貯留、浮腫(むくみ)、体重増加などがあらわれることがある |
| ミオパチー(まれに) | 低カリウム血症の結果として起こることがあり、脱力感、四肢痙攣(けいれん)・麻痺などがあらわれることがある |
はなせる薬局 薬剤師上記のような症状が感じられた場合は、1人で抱え込まず医師に相談してくださいね。
桂枝加芍薬湯に関する注意点
桂枝加芍薬湯を安心して服用するために、知っておくべきポイントをまとめました。
2週間〜4週間かかると言われている
桂枝加芍薬湯は、飲んですぐに変化を感じる方もいますが、体質や症状の経過によっては実感までに時間がかかることがあります。
目安として2週間〜4週間ほどで様子を見ることもありますが、焦って自己判断で増量したり、別の薬を足したりするのは避けましょう。
服用中はお腹の張りや痛み、排便の回数や状態に変化があるかを確認し、続け方について医師に相談するとよいでしょう
ほかの漢方薬(甘草を含む薬)との飲み合わせに要注意
桂枝加芍薬湯は複数の生薬からできているため、ほかの漢方薬と一緒に飲む場合は生薬の重なりに注意が必要です。
特に本剤には甘草が含まれており、甘草を含む漢方薬や、グリチルリチン酸を含む薬を併用すると、むくみや血圧の変化、カリウムの低下などにつながることがあります。
はなせる薬局 薬剤師処方薬だけでなく市販薬やサプリも含め、飲んでいるものは医師や薬剤師にまとめて伝えておくと安心でしょう。
長期間服用する場合は定期的に血液検査を受ける
桂枝加芍薬湯を長く続ける場合は、体調の変化に気づきやすくするために、定期的な確認が大切です。
甘草を含む漢方薬では、まれにカリウムが低下し、だるさや力が入りにくい感じ、足がつるといった不調につながることがあります。
また、血圧やむくみが気になる方もいるでしょう。こうした変化は自分では判断しにくいことがあるため、医師の指示に沿って血液検査などでチェックしながら続けると安心です。
桂枝加芍薬湯の服用を避けるべき人の特徴
桂枝加芍薬湯は体質や症状に合わせて使う漢方薬です。そのため、次に当てはまる方は自己判断で飲み始めたり続けたりせず、医師や薬剤師に相談した上で慎重に検討することが大切です。
- 過去に薬で発疹やかゆみなどのアレルギー症状が出たことがある人
- 妊娠中、または妊娠している可能性がある人
- 授乳中の人
- 小児
- 高齢者
- 血圧やカリウムの管理が必要な人
- 甘草を含む漢方薬や、グリチルリチン酸を含む薬を飲んでいる人
上記に当てはまる場合は、受診時や薬局で必ず伝えてください。
はなせる薬局 薬剤師今の体調に合っているかを一緒に確認してもらうことで、不安を抱えたまま服用することを避けやすくなります。
桂枝加芍薬湯に関するよくある質問
患者さんから寄せられることの多い疑問にお答えします。
桂枝加芍薬湯はどのくらいの期間飲み続けますか?
桂枝加芍薬湯を飲み続ける期間は、人によって異なります。桂枝加芍薬湯は体質や症状に合わせて使う漢方薬のため、つらさが強い時期には一定期間続けることもあるでしょう。
大切なのは、飲みながら経過を見て、改善が実感できない場合には漫然と続けないことです。お腹の張りや痛み、排便の状態に変化があるかを確認し、医師や薬剤師に相談しながら区切りを決めると安心です。
桂枝加芍薬湯に依存するリスクはありますか?
桂枝加芍薬湯、一般的に依存が問題になりやすいタイプの漢方薬ではありません。ただし、症状がつらい時期は、飲まないと不安に感じることもあるでしょう。
量を増やしたくなったり、やめどきが分からなくなったりした場合は、自己判断で調整せず、医師や薬剤師に相談することが大切です。
はなせる薬局 薬剤師定期的に必要性を見直しながら使うことで、安心して続けやすくなります。
桂枝加芍薬湯と桂枝加芍薬大黄湯の違いは何ですか?
桂枝加芍薬湯と桂枝加芍薬大黄湯は、どちらもお腹の不調に使われることがありますが、目的と考え方に違いがあります。
桂枝加芍薬湯は、お腹の張りを伴う腹痛や、便意があるのにすっきり出ない状態に用いられる処方です。一方、桂枝加芍薬大黄湯は、大黄という成分が加わっており、便が出にくい状態に対してより働きかける処方です。
便の状態や腹痛の出方によって合うお薬は異なるため、症状を整理して医師に相談すると選びやすくなります。
桂枝加芍薬湯の代わりになる市販薬はありますか?
桂枝加芍薬湯は、市販薬として同じ処方名の漢方製剤が販売されていることがあります。ただし、製品によって成分量や飲み方が異なる場合があるため、購入時には表示をよく確認しましょう。
また、ほかの漢方薬と併用すると生薬が重なることがあり、特に甘草を含む製剤には注意が必要です。
はなせる薬局 薬剤師持病がある方や、ほかの薬を服用している方は、事前に薬剤師へ相談すると安心です。
桂枝加芍薬湯はツムラとクラシエで違いがありますか?
桂枝加芍薬湯という処方名は同じでも、ツムラとクラシエでは製品の位置づけや表示内容に違いがあります。
ツムラの医療用は、腹部膨満感のあるしぶり腹や腹痛を対象に、成人では1日7.5gを2〜3回に分けて食前または食間に用いるとされています。
一方、クラシエの一般用医薬品は、しぶり腹、腹痛に加えて下痢や便秘も効能に含まれ、1日3回の服用です。成分量や添加物、対象年齢も異なるため、同じ感覚で選ばず、手元の説明書や医師・薬剤師の案内を確認すると安心です。
桂枝加芍薬湯は食前と食後どちらで飲むべきですか?
桂枝加芍薬湯は、基本的に食前または食間に飲むことが多い薬です。食前や食間に服用することで、体に働きかけやすいと考えられています。
食後に飲んでも大きな問題になることは少ないものの、本来の使い方とは少しずれる可能性があります。もし胃の負担が気になる場合や、他の薬との兼ね合いがある場合には、無理にタイミングを守ろうとせず、自分の体調に合わせることも大切です。
飲み方に不安があるときは、一人で抱え込まずに薬剤師や医師に相談してみると安心につながります。
桂枝加芍薬湯は効果が出るまでどれくらいですか?
桂枝加芍薬湯がどのくらいで効くかは、人によって差があります。体質や症状の状態によって、比較的早く変化を感じることもあれば、少し時間がかかることもあります。
一般的には、しばらく続けて様子を見ることが多く、1週間ほどを目安に体の変化を確認するケースもあります。
ただし、まったく変化が感じられない場合や、かえって不調が強くなるようなときは、無理に続ける必要はありません。
はなせる薬局 薬剤師つらさを我慢せず、早めに医療機関や薬局で相談することで、より合った方法を見つけやすくなります。
桂枝加芍薬湯は便秘のときにも飲めますか?
便秘のときに使えるかどうかは、症状のタイプや体質によって判断が分かれます。桂枝加芍薬湯は、お腹の張りや腹痛を伴う状態に向いていることが多く、そのような背景がある便秘であれば選択肢になる場合があります。
ただし、すべての便秘に合うわけではありません。強い腹痛や吐き気を伴う場合、長く続いている場合は、自己判断で使い続けるのは避けたほうが安心です。
お腹の不調が続くときは、無理に我慢せず、自分に合った対処法を一緒に考えてもらうことが大切です。
まとめ|桂枝加芍薬湯について正しく理解しよう
桂枝加芍薬湯は、お腹の張りを伴うしぶり腹や腹痛に用いられる漢方薬で、乱れたお腹の状態を少しずつ整えていく考え方の処方です。症状の出方によっては、過敏性腸症候群の方に処方されることもあります。
服用を始めたら、まずは飲み方の基本を守りつつ、変化が出るまでに時間がかかる場合があることも知っておくと安心でしょう。
ぜひ、本記事の内容を参考にして、桂枝加芍薬湯がどんな薬か理解を深めてくださいね。
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