突然の頭痛、月に1度の生理痛、歯の鈍痛、夜中の発熱——市販の痛み止めは「とりあえずあれば安心」という存在ですが、いざ薬局やドラッグストアの棚を前にすると、商品が多くて選び方がわからないという声をよく聞きます。本記事では、薬剤師が 主要成分の違い・症状別の選び方・代表商品10選・年代別の注意点を、PMDA添付文書・厚生労働省資料・コクランレビューにもとづいて整理して解説します。
6年制薬学部を卒業後、日本イーライリリー株式会社にて糖尿病・成長ホルモン領域のMRとして2年間従事。基礎インスリンから経口血糖降下薬まで幅広い製剤を担当し、多くの専門医とともに糖尿病治療を通じた患者貢献のあり方を検討。現在は、はなせる薬局の管理薬剤師・開設者として、医療機関連携を通じて患者さんへの貢献の幅を広げるべく活動している。

この記事の目次
痛み止め市販薬は「成分」で選ぶ
市販の解熱鎮痛薬は、商品名がたくさんあって混乱しやすいですが、有効成分は大きく3系統に絞られます。まず成分の特徴を理解すれば、自分に合う1本を選ぶ基準ができます。
解熱鎮痛薬の3つの主成分系統

市販で出会う代表的な3つの系統と、その素顔を簡単に整理します。
ロキソプロフェン(NSAIDs)
処方薬「ロキソニン」と同じ成分で、痛みのもとになる物質(プロスタグランジン)の合成を抑える非ステロイド性消炎鎮痛薬(NSAIDs)。市販では第1類医薬品として薬剤師の対面販売が必要です。即効性が期待できる一方、胃腸への負担や腎機能への影響、心血管系のリスクなどの注意点があり、添付文書の確認が欠かせません(出典:PMDA 医薬品情報)。
イブプロフェン(NSAIDs)
こちらもNSAIDs。鎮痛・解熱・抗炎症の3拍子がそろい、頭痛から生理痛、関節痛まで幅広く使われます。指定第2類医薬品として登録販売者からも購入可能で、ラインナップが豊富です。胃粘膜保護成分や鎮静成分との組み合わせ製剤が多いのも特徴です。
アセトアミノフェン
中枢神経に作用して痛みを感じにくくする解熱鎮痛成分で、抗炎症作用はほとんどありません。胃への負担が比較的少なく、添付文書の用法・用量を守れば妊娠中・小児にも比較的使いやすいと整理されています(最終判断は医師・薬剤師に必ず相談を)。世界各国でファーストチョイスの解熱鎮痛薬として広く用いられています。
成分別の特徴一覧
| 成分 | 分類 | 主な特徴 | 胃への負担 | 妊娠中 | 小児 |
|---|---|---|---|---|---|
| ロキソプロフェン | 第1類 | 強めの鎮痛・抗炎症 | 注意 | 原則不可(妊婦は要相談) | 15歳未満不可 |
| イブプロフェン | 指定第2類 | 幅広い痛みに | 注意 | 後期は禁忌 | 15歳未満不可(製剤による) |
| アセトアミノフェン | 第2類 | 解熱・鎮痛、抗炎症弱 | 比較的少ない | 第一選択候補(要相談) | 製剤により小児可 |
| アスピリン | 指定第2類 | 古典的NSAIDs | 注意 | 後期は禁忌 | 15歳未満不可(ライ症候群) |
参考:各製品の添付文書、厚生労働省、Cochrane Library
痛みの種類別・成分の向き不向き
痛みの種類によって、効きやすい成分の傾向は変わります。「痛み=なんでもロキソニン」ではなく、まずは原因と部位を意識して選びましょう。
- 頭痛(緊張型):イブプロフェン、アセトアミノフェン、ロキソプロフェンいずれも候補
- 生理痛:プロスタグランジン関与のため NSAIDs(ロキソプロフェン・イブプロフェン)が有効、痛みのピーク前から早めに服用するとよい
- 歯痛・抜歯後:炎症を伴うので NSAIDsが向く
- 関節痛・腰痛:NSAIDsの抗炎症作用が役立つ場面が多い
- 発熱を伴う風邪症状:胃にやさしいアセトアミノフェンが第一候補
配合成分(カフェイン・鎮静成分・胃保護成分)の役割と注意点
「イブA」や「ナロンエースT」など複合成分の頭痛薬には、鎮痛成分以外にも複数の成分が配合されています。それぞれの役割と注意点を確認しておきましょう。
| 配合成分 | 主な役割 | 注意点 |
| カフェイン(無水カフェイン等) | 血管収縮を助け鎮痛効果を補助する | 毎日の習慣的な摂取で反跳性頭痛が起きやすくなることがある |
| 鎮静成分(アリルイソプロピルアセチル尿素等) | 鎮痛成分の効果を高め、痛みに伴う過敏さを和らげる | 眠気が出ることがある。継続服用は依存リスクに注意。運転・機械操作前の服用は避ける |
| 胃保護成分(メタケイ酸アルミン酸Mg・酸化Mg等) | 胃粘膜への負担を和らげる | 腎機能低下のある方は医師に相談 |
カフェインは鎮痛効果を補助する成分として多くの市販頭痛薬に配合されています。しかし毎日継続して摂取していると、カフェインが体から抜けたときに反跳性の頭痛が起きやすくなることが指摘されています。
鎮静成分(アリルイソプロピルアセチル尿素・ブロムワレリル尿素等)は眠気が出ることがあります。運転前や機械操作をする場合の服用は避けることが大切です。長期間の継続服用には依存性のリスクがあるとされているため、用法・用量を守って使用するようにしましょう。
はなせる薬局 薬剤師鎮静成分入りの頭痛薬を毎日のように飲んでいる方は、頭痛外来や薬剤師にご相談ください。成分や服用頻度に応じて、より適切な選択肢を一緒に考えることができます。
ロキソニンSシリーズ 各製品の成分比較
ロキソプロフェンナトリウム水和物を主成分とするロキソニンSシリーズには、複数の製品があります。主な違いは配合成分にあります。どれが自分に合うかは、体質や症状によって異なります。
| 製品名 | 主成分 | 主な配合成分 |
| ロキソニンS | ロキソプロフェンNa水和物 68.1mg | なし(主成分のみ) |
| ロキソニンSプラス | ロキソプロフェンNa水和物 68.1mg | 酸化マグネシウム(胃保護) |
| ロキソニンSプレミアム | ロキソプロフェンNa水和物 68.1mg | 酸化マグネシウム+L-グルタミン(胃保護) |
| ロキソニンSクイック | ロキソプロフェンNa水和物 68.1mg | なし(速溶フィルムコーティング錠) |
ロキソニンSプラス・プレミアムには胃保護成分が加わっており、胃が気になる方が選ぶ場合があります。どの製品が自分に合っているか分からない場合は、薬剤師にご相談いただくことをお勧めします。
なお、製品によって対象となる症状(適応)や用法・用量が異なります。添付文書をよく確認したうえで使用するようにしましょう。
症状別 痛み止め早見表

「いま自分が抱えている痛みに、どの成分が候補か」を素早くチェックできるよう整理しました。最終的な選択は薬剤師・登録販売者の対面での確認のもと行ってください。
| 症状 | 第一候補成分 | 代表的な市販薬 | ワンポイント |
|---|---|---|---|
| 緊張型頭痛 | イブプロフェン/アセトアミノフェン | イブクイック、カロナールA | 休息・姿勢改善も併用 |
| 片頭痛(軽症) | イブプロフェン | イブクイック頭痛薬DX | 頻繁なら早めに受診 |
| 生理痛 | NSAIDs(イブ/ロキソ) | エルペインコーワ、ロキソニンS | 痛む前に早めに服用 |
| 歯痛・抜歯後 | ロキソプロフェン/イブプロフェン | ロキソニンS、バファリンプレミアム | 歯科受診が前提 |
| 関節痛・筋肉痛 | NSAIDs | ロキソニンSプレミアム | 外用薬との併用は要相談 |
| 発熱を伴う痛み | アセトアミノフェン | カロナールA、タイレノールA | 水分・休養が最重要 |
| 小児の発熱・痛み | アセトアミノフェン(小児用) | 小児用バファリンCⅡ | 3歳未満は受診を |
はなせる薬局 薬剤師インフルエンザ感染が疑われる際の発熱には、NSAIDs(ロキソプロフェン・イブプロフェン等)の使用に注意が必要です。インフルエンザ脳炎・脳症との関連が指摘されており(PMDA・厚生労働省の注意喚起)、特に小児・未成年ではアスピリン等のサリチル酸系製品の使用は避けることとされています。発熱時の解熱・鎮痛には、アセトアミノフェンが第一選択として推奨されることが多いとされています。判断に迷う場合は、薬剤師または医師にご相談ください。
あなたに合う鎮痛薬の選び方フロー

迷ったら、次の順番でセルフチェックしてみてください。
- 年齢・性別・体調:15歳未満/妊婦・授乳婦/高齢者/持病ありに該当するか
- 痛みの種類:炎症を伴うか(生理痛・歯痛・関節痛=NSAIDs寄り)、発熱中心か(=アセトアミノフェン)
- 胃の弱さ:胃腸が弱いならアセトアミノフェン、胃配慮成分つきNSAIDsを選ぶ
- 運転・仕事の予定:鎮静成分(〜尿素・ジフェンヒドラミン等)配合品は服用後の運転を避ける
- 飲み合わせ:他のかぜ薬・解熱鎮痛薬と成分重複していないかチェック
- 不明な点はその場で薬剤師に相談:これが一番確実です
【薬剤師監修】痛み止めおすすめ市販薬10選
ここからは、ドラッグストアや薬局でよく見かける代表10商品を、成分系統ごとに紹介します。「特定の商品が一番優れている」という単純な序列やランキングなどはありません。ご自身の症状・体質・年齢に合うかどうかが判断軸です。

- 速やかな鎮痛・解熱作用(ロキソプロフェンNa配合)
- プロドラッグ製剤で胃への直接刺激が比較的少ない
- 15歳未満は服用不可、購入時は薬剤師への確認が必要
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※第1類医薬品。購入時に薬剤師による情報提供があります。ご自身の状態に不安がある場合は、購入前にかかりつけ医・薬剤師にご相談ください。

- 強い痛みにアプローチする4成分配合(ロキソプロフェンNa+鎮静成分+カフェイン+胃保護成分)
- 酸化マグネシウム配合で胃の負担をやわらげる設計
- 鎮静成分配合のため運転・機械操作は服用後しない
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※第1類医薬品。購入時に薬剤師による情報提供があります。ご自身の状態に不安がある場合は、購入前にかかりつけ医・薬剤師にご相談ください。

- イブプロフェン+アセトアミノフェンのダブル配合
- 胃にやさしい成分(乾燥水酸化アルミニウムゲル)も同梱処方
- 鎮静成分配合のため運転・機械操作は服用後しない
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※指定第2類医薬品。薬剤師・登録販売者にご相談のうえ使用してください。持病のある方や妊娠・授乳中の方は購入前に医師にご相談ください。

- イブプロフェン200mg配合の頭痛着目処方
- 酸化マグネシウム配合で吸収促進と胃配慮を両立
- 鎮静成分配合のため運転・機械操作は服用後しない
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※指定第2類医薬品。薬剤師・登録販売者にご相談のうえ使用してください。持病のある方や妊娠・授乳中の方は購入前に医師にご相談ください。

- イブプロフェン+エテンザミドのダブル鎮痛成分
- 頭痛・生理痛など幅広い痛みに対応
- 鎮静成分配合のため運転・機械操作は服用後しない(15歳未満不可)
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※指定第2類医薬品。薬剤師・登録販売者にご相談のうえ使用してください。持病のある方や妊娠・授乳中の方は購入前に医師にご相談ください。

- 胃への負担が比較的少ないアセトアミノフェン製剤
- 眠くなる成分を含まず、1回1錠で効くスタンダード設計
- 他のかぜ薬・解熱鎮痛薬との成分重複に注意
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※第2類医薬品。妊娠中・授乳中の方や持病のある方は、購入前に医師・薬剤師にご相談ください。

- アセトアミノフェン300mg/錠、1回1錠の服用設計
- 眠くなる成分を含まず、空腹時にも比較的飲みやすい
- 胃にやさしい設計で運転前の鎮痛にも適する
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※第2類医薬品。妊娠中・授乳中の方や持病のある方は、購入前に医師・薬剤師にご相談ください。

- イブプロフェン+ブチルスコポラミン臭化物の生理痛特化処方
- 「ズキズキ」と「ねじれるような」生理痛の両方にアプローチ
- 15歳未満不可、緑内障・前立腺肥大の方は使用不可
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※指定第2類医薬品。薬剤師・登録販売者にご相談のうえ使用してください。持病のある方や妊娠・授乳中の方は購入前に医師にご相談ください。

- 歴史と実績のあるアスピリン配合の解熱鎮痛薬
- 胃を守る成分(ダイバッファーHT)を同時配合
- 15歳未満不可、出血傾向や手術前の方は要相談
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※指定第2類医薬品。薬剤師・登録販売者にご相談のうえ使用してください。持病のある方や妊娠・授乳中の方は購入前に医師にご相談ください。

- 3歳〜14歳が対象の小児用解熱鎮痛薬
- アセトアミノフェン製剤で胃の負担が比較的少ない
- 水なしで噛んで服用できるチュアブル錠
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※第2類医薬品。3歳未満には服用させないでください。発熱・痛みの判断に迷う場合は、必ずかかりつけ小児科にご相談ください。
痛み止めを使うときの注意点

空腹時の服用は避ける
特にNSAIDs(ロキソプロフェン・イブプロフェン・アスピリン)は、空腹時に飲むと胃粘膜への刺激が大きくなりやすい成分です。軽く何かを食べてから、もしくはコップ1杯(約200mL)の水と一緒に服用してください。
1日の用量・服用間隔を守る
早く効かせたいからと自己判断で増量するのは危険です。添付文書の「1回量」と「服用間隔(多くは4〜6時間以上)」を必ず守りましょう。効きが弱いと感じる場合は、増やすのではなく薬剤師に相談してください。
アルコール・カフェインとの相互作用
アルコールはNSAIDsの胃粘膜刺激を強め、アセトアミノフェンの肝障害リスクを高めます。服用前後の飲酒は控えましょう。鎮静成分配合の痛み止めをコーヒーや栄養ドリンクと併用すると、カフェイン過剰摂取の原因にもなります。
他の薬との飲み合わせ
特に注意したい組み合わせは次の3つです。
- 降圧薬(特にACE阻害薬・ARB・利尿薬):NSAIDsとの併用で降圧効果が弱まり、腎機能にも影響する可能性
- 抗凝固薬(ワーファリン・DOAC):NSAIDs・アスピリンとの併用で出血リスクが上がる
- 他のかぜ薬・解熱鎮痛薬:同じ成分が重複すると過剰摂取になる(ピリン系・アセトアミノフェンの重複に特に注意)
処方薬を飲んでいる方は、市販薬を選ぶ前に必ずお薬手帳を見せて薬剤師に相談してください。同じ作用の重複や、効きすぎ・効かなさすぎを防げます。
市販の痛み止めが効かないと感じたときに確認したいこと
「飲んだのに痛みが和らがない」という経験をお持ちの方も多いかと思います。いくつかのポイントを確認することで、改善できる場合があります。
服用のタイミングを確認する
多くの頭痛では、痛みが軽いうちに早めに服用したほうが鎮痛効果を得やすいとされています。強い痛みが出てしまってから服用した場合は、効果を感じにくいことがあります。
「もう少し様子を見よう」と判断するうちに服用が遅れるケースは多いため、頭痛が始まったと気づいたら早めの対応を心がけるとよいでしょう。
片頭痛では前兆(視野のちらつき・手足のしびれ感など)が現れることがあります。前兆が出たタイミングや、頭痛が始まった直後が服用の一般的な目安とされています。
成分の種類が合っているかを確認する
市販の頭痛薬には主にNSAIDs系(ロキソプロフェン・イブプロフェンなど)とアセトアミノフェン系があります。頭痛の種類や体質によって、どちらが合うかは異なります。
筋肉のこわばりが主な原因となる緊張型頭痛には、アセトアミノフェンが用いられることがあります。一方、炎症が関与しやすい頭痛にはNSAIDsが選ばれることがあります。ただし個人差が大きいため、薬剤師に相談することも選択肢のひとつです。
はなせる薬局 薬剤師「飲んでも効かない」状態が続く場合は、頭痛の種類や原因を見直すきっかけになります。市販薬で対応しにくい頭痛の可能性もあるため、繰り返す場合は医療機関への受診もご検討ください。
用法・用量を正しく守って服用する
添付文書に記載された用法・用量を守ることも大切です。服用量が不足している場合や服用間隔が短すぎる場合は、十分な効果が得られないことがあります。
量を増やせば効果が高まるというわけではなく、副作用のリスクが上がることがあるため注意が必要です。用法・用量に疑問がある場合は、薬剤師または医師にご相談ください。
薬物乱用頭痛(MOH)について知っておきたいこと
毎日のように頭痛薬を飲み続けていると感じる方は、薬物乱用頭痛(MOH)について知っておくことが大切です。MOHは、鎮痛薬の過度な使用によって頭痛が慢性化してしまう状態をいいます。
薬物乱用頭痛(MOH)とはどのような状態か
MOH(Medication Overuse Headache)とは、鎮痛薬を頻繁に服用することで脳が痛みに対してより敏感になり、頭痛が慢性化してしまう状態をいいます。
この状態になると、薬を服用しても効果を感じにくくなったり、薬が切れるたびに頭痛が起きやすくなったりすることがあります。日本頭痛学会の慢性頭痛の診療ガイドラインでも、MOHは治療が必要な状態として明記されています。
MOHになりやすい服用頻度の目安(ICHD-3基準)
国際頭痛学会(ICHD-3)が示す目安では、以下の服用頻度が3か月以上続く場合にMOHのリスクが高まるとされています。
| 頭痛薬の種類 | MOHの目安となる服用頻度(ICHD-3) |
| NSAIDs(ロキソプロフェン・イブプロフェン・アセトアミノフェン等)単剤 | 月15日以上、3か月超 |
| トリプタン系・エルゴタミン系・複合鎮痛薬(コデイン等含有) | 月10日以上、3か月超 |
「薬を飲んでも頭痛が以前より悪化する」「朝起きたときから頭が痛い」という症状が続く場合は、MOHが疑われることがあります。これらはあくまで参考の目安であり、診断は医師が行います。
頭痛が続く・悪化するときは早めに受診を
MOHが疑われる場合は、自己判断で急に服用をやめることは避けてください。離脱症状として一時的に頭痛が強くなることがあるため、医師の指導のもとで対応することが大切です。
受診先として、神経内科・頭痛外来が一般的です。「市販薬を月に10日以上飲んでいる」と感じる場合は、早めに医師にご相談されることをお勧めします。
はなせる薬局 薬剤師月に10日以上の頻度で市販の頭痛薬を使用している状態が続いている場合は、MOHのリスクを念頭に置いて専門医への受診をご検討ください。はなせる薬局でも、受診の目安について薬剤師にご相談いただけます。
薬を使わずに頭痛を和らげる方法について
「なるべく薬に頼りたくない」という気持ちを持つ方も多いかと思います。非薬物療法には、頭痛の種類によって一定のエビデンスが報告されているものがあります。ただし、薬物療法の代わりではなく、補助的な手段として理解することが大切です。
緊張型頭痛に対する非薬物療法
緊張型頭痛には、筋肉のこわばりをほぐすアプローチが補助的に有効な場合があります。首や肩まわりを温めることで血行が改善されやすくなるとされており、温熱療法が用いられることがあります。
- 首や肩のストレッチ・マッサージ
- 温熱療法(蒸しタオル・入浴など)
- 適度な有酸素運動(ウォーキングなど)
- 睡眠・休息の確保
- ストレスの緩和(リラクゼーション法など)
片頭痛に対する非薬物療法
片頭痛の発作中は、暗くて静かな場所で安静にすることが一般的に勧められています。光・音・においなどの刺激が痛みを悪化させることがあるため、できる限り刺激を避けることが大切です。
- 暗く静かな場所で横になる
- 痛む部位を冷やす(アイスパック等)
- 光・音・においの強い刺激を避ける
- 規則正しい睡眠・食事・水分補給を心がける
- ストレスや過度の疲労をためないようにする
SNS上では「薬を使わずに治った」という体験談が数多く見られます。しかし頭痛は個人差が大きく、特定の方法が全員に効果があるとは言いきれません。試してみて改善が見られない場合や頭痛が悪化する場合は、医師にご相談されることをお勧めします。
はなせる薬局 薬剤師非薬物療法で改善が見られない場合や、頭痛の頻度・強さが増している場合は、神経内科・頭痛外来への受診をご検討ください。市販薬でコントロールが難しくなっている場合も、医師への相談をお勧めします。
妊娠中・授乳中の方への注意

妊娠初期〜中期:アセトアミノフェンが第一選択
妊娠中の市販鎮痛薬は、世界的にもアセトアミノフェンが第一選択として整理されています。短期間・必要最小限であれば比較的安全と整理されていますが、必ずかかりつけ産婦人科医に相談のうえで使用してください。
妊娠後期:NSAIDsの使用は禁忌
妊娠28週以降のNSAIDs(ロキソプロフェン・イブプロフェン・アスピリン等)使用は、胎児の動脈管早期収縮や羊水減少のリスクがあるため使用しません。FDA・PMDAいずれの整理でも明確に禁忌とされています。
授乳中
アセトアミノフェン・イブプロフェンは、母乳への移行量が比較的少なく、短期使用は許容されることが多いとされています(出典:国立成育医療研究センター「妊娠と薬情報センター」)。ただし、最終的な可否は医師・薬剤師に確認してください。
小児(こども)の服用について

小児用バファリンCⅡは3歳以上が対象
小児用バファリンCⅡはアセトアミノフェン製剤で、3歳〜14歳が対象です。3歳未満には市販の解熱鎮痛薬は使用しないのが原則で、発熱・痛みがある場合はかかりつけ小児科を受診しましょう。
アスピリンを子どもに使わない理由
アスピリンを15歳未満の子どもに使うと、まれに重い肝障害・脳症を伴うライ症候群を起こすリスクが知られています。子どもの解熱鎮痛にはアセトアミノフェンが基本です。
物理的冷却と併用
熱が高くつらそうなときは、薬と並行してこまめな水分補給と、首筋・脇の下を冷やすなどの物理的な工夫も効果的です。ぐったり・水分が取れない・痙攣などのサインがあれば、薬の判断より先に受診してください。
高齢者の方への注意

腎機能・肝機能との関係
高齢になると腎機能・肝機能が自然と低下する方が多く、NSAIDsの長期連用は腎障害のリスクを高めます。アセトアミノフェンであっても、肝機能が低下している方や1日上限量を超える使用は要注意です。
他の薬(降圧薬・抗血栓薬)との併用
慢性疾患で複数の処方薬を服用している場合、市販薬の追加で飲み合わせのリスクが急に上がります。特に降圧薬・抗血栓薬・糖尿病薬と痛み止めの併用は、購入前に必ずお薬手帳とともに薬剤師に相談を。
- アスピリン配合の解熱鎮痛薬
- 胃粘膜保護成分配合で胃にやさしい
- 眠くなる成分不含、15歳以上
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痛み止めに関するよくある質問
Q. 生理痛で毎月飲んでも大丈夫ですか?
用法・用量と服用日数を守った範囲内であれば、毎月の生理時に使用すること自体は一般的です。ただし、毎月3〜5日以上を継続的に必要とする方や、年々痛みが強くなっている方は、子宮内膜症などの可能性もあるため婦人科の受診をおすすめします。
Q. 眠くなりにくい痛み止めはありますか?
鎮静成分(〜尿素、ジフェンヒドラミン等)を含まない製剤を選ぶと、眠気の影響を抑えやすくなります。タイレノールAやカロナールA、ロキソニンS(鎮静成分なしタイプ)が候補です。
Q. 胃が弱いのですが、どれが良いですか?
胃への負担が比較的少ないアセトアミノフェン製剤(カロナールA、タイレノールA)が候補です。NSAIDsを使う場合は、胃を保護する成分(酸化マグネシウム、合成ヒドロタルサイト等)が同時配合された製品を選び、食後・水分とともに服用してください。
Q. お酒と一緒に飲んでもいいですか?
避けてください。NSAIDsの胃粘膜刺激が強まり、アセトアミノフェンの肝障害リスクも増します。飲酒前後の服用は控え、痛みがあるときは飲酒自体を控えるのが安全です。
Q. 漢方の痛み止めという選択肢はありますか?
月経痛や頭痛、肩こりに対して当帰芍薬散・加味逍遙散・葛根湯・呉茱萸湯などが用いられることがあります。体質との相性が重要なので、市販で選ぶ際も薬剤師に相談しましょう。
Q. 何日続いたら病院に行くべき?
市販薬を5日以上連用しても改善しない場合や、痛み方が普段と違う・しびれ・麻痺・呂律困難などを伴う場合は、迷わず医療機関を受診してください。
Q. 痛み止めの保管で気をつけることは?
直射日光・高温多湿を避ける、子どもの手の届かない場所に置く、使用期限を必ず確認するの3点が基本です。シートから出して保管したり、他の容器に詰め替えるのは避けてください。
Q. 頭痛薬に依存性はありますか?
ロキソプロフェン・イブプロフェン・アセトアミノフェンなどの主成分自体に、身体的依存性は一般的に報告されていません。ただし、鎮静成分(アリルイソプロピルアセチル尿素等)が配合された製品では、習慣的な使用による依存リスクが指摘されています。また、カフェイン配合製品では反跳性頭痛のリスクもあります。使用頻度が高まると薬物乱用頭痛(MOH)につながるリスクがあるため、月10日以上の使用が続く場合は医師にご相談ください。
Q. カフェインが入っている頭痛薬と入っていないものの違いは何ですか?
カフェインには血管を収縮させる作用があり、鎮痛成分の効果を高めることが期待されています。一方で毎日摂取していると、カフェインが体から抜けたときに反跳性頭痛が起きやすくなることがあります。カフェインを普段から多く摂る方やカフェインに敏感な方は、カフェイン非配合の製品を選ぶことも一つの方法です。選択に迷う場合は薬剤師にご相談ください。
Q. ロキソプロフェンとイブプロフェン、どちらを選べばよいですか?
どちらもNSAIDsに分類される消炎鎮痛成分ですが、効果の現れ方や吸収速度に個人差があります。どちらが合うかは体質や症状によって異なるため、薬剤師に相談したうえで選ぶことをお勧めします。どちらも胃への負担が少なくないため、食後に服用することをお勧めします。胃の弱い方や消化器疾患のある方は、使用前に医師または薬剤師にご相談ください。
Q. イブAとイブDXはどう違いますか?
どちらもイブプロフェンを主成分としていますが、配合成分に違いがあります。イブAには鎮静成分(アリルイソプロピルアセチル尿素)とカフェインが配合されており、鎮痛効果を補助する働きが期待されます。イブDXにはさらにビタミンB1(チアミン塩酸塩)も加わっています。鎮静成分による眠気が出ることがあるため、運転前や重要な作業前の服用は避けるようにしてください。
Q. 薬物乱用頭痛になってしまったらどうすればよいですか?
まず神経内科・頭痛外来への受診をお勧めします。自己判断で急に服用をやめると、離脱症状として一時的に頭痛が強くなることがあります。医師の指導のもとで、徐々に服用頻度を減らしていくことが一般的な対応です。MOHと診断された場合、予防薬の処方や生活指導を受けることができます。はなせる薬局でも、受診の目安について薬剤師にご相談いただけます。
まとめ|成分を理解して、自分に合う痛み止めを選ぼう

市販の痛み止めは、たくさんの商品名で売られていますが、有効成分は数種類に集約されます。成分の違いと、自分の症状・体調・服用シーンを照らし合わせれば、自分に合った1本にたどり着けます。
どの成分が向くか迷ったら、無理に決めず、お薬手帳を持って薬剤師に相談するのが一番安全で早道です。痛みは我慢するものではありません。正しく付き合って、つらい時間を最小限にしていきましょう。
