【薬剤師監修】トラゾドン塩酸塩錠とは？期待できる効果や基本の飲み方、副作用を解説

「気分が落ち込んだり、集中力が続かなくて困っている…」
「トラゾドン塩酸塩錠を処方してもらったけど、本当に飲んで大丈夫かな…」
「トラゾドン塩酸塩錠を飲んで依存したら、どうしよう…」

このような不安を抱えている方に向けて、トラゾドン塩酸塩錠の特徴や期待できる効果、服用するタイミングなどを詳しく解説します。

他にも、太るのか・依存するのか・飲み忘れた時の対処法など、トラゾドン塩酸塩錠について知っておくべきことを網羅的に解説します。

心療内科・精神科で処方される薬を使うことに不安がある方や、気分の落ち込みや不安・緊張などの辛い症状を改善したい方は、ぜひ最後まで読んでみてください。

トラゾドン塩酸塩錠とは

トラゾドン塩酸塩錠は、うつ病・うつ状態の治療に用いられる抗うつ薬です。分類はSARI（セロトニン受容体拮抗・再取り込み阻害薬）で、セロトニンの働きを整えることに利用されています。

日本での承認効能・効果は「うつ病・うつ状態」となっており、気分の落ち込みや意欲低下、不安感などの改善を目的に処方されます。服用の可否や用量は必ず医師・薬剤師に確認しましょう。

作用の仕組み

トラゾドン塩酸塩錠は、神経間で働くセロトニンがゆっくり回収されるように作用するお薬です。

あわせて特定のセロトニン受容体orセロトニンの受け皿にふたをするように作用し、過度な刺激を落ち着けます。その他にも、特定の神経の働きを弱める作用などから、気持ちを落ち着かせたり、眠気を誘ったりする作用もあります。

これらが合わさり、気分の波をならし、不安や緊張を和らげることに効果があるとされています。

抗うつ薬の中での位置づけ

トラゾドンが他の薬と違うのは、単にセロトニンの「量」を増やすだけでなく、特定の働きを「ブロック」することで、セロトニンの働きをよりバランスよく整えやすいことが大きな特徴です。

不安や緊張を伴う抑うつで選ばれることがあり、状況により単剤または他剤と組み合わせて使われています。

トラゾドン塩酸塩錠に期待できる効果

ここでは、トラゾドン塩酸塩錠に期待できる効果を5つ紹介します。

気分の落ち込みを和らげる

トラゾドン塩酸塩錠はセロトニンの働きを整え、抑うつ気分や意欲低下などの中核症状を少しずつ和らげる効果が期待できます。

『何をしても楽しくない』『動き出せない』といったつらい気持ちが改善し、睡眠や食事、身の回りのことから少しずつ出来るようになることがあります。

不安や緊張を落ち着かせる

トラゾドン塩酸塩錠はセロトニンの働きを整え、過剰な刺激をしずめることで、心配や焦燥、神経過敏などの不安症状が落ち着く効果が見込めます。

人前で強く緊張してしまう場面や、理由のはっきりしない不安が波のように押し寄せるときにも、気持ちの起伏をなだらかにし、日中の落ち着きや作業への取りかかりやすさの回復に役立つ効果が期待できます。

いわゆる抗不安薬のような即効性を狙う薬ではなく、抗うつ治療の一環として不安にも働きかけるという位置づけです。

入眠しやすくする

トラゾドン塩酸塩錠はセロトニンに働きかけて高ぶりや考え込みをしずめ、就寝前の緊張をゆるめるとされています。

眠気を促す性質があり、医師の指示で就寝前に用いると寝つきまでの時間が短くなる場合があります。入眠しやすくなれば、翌朝の回復感や日中の集中力が戻りやすくなるでしょう。

ただし、日本では不眠症の効能は承認外です。使用可否は主治医の判断に従いましょう。

中途覚醒を減らし、眠りを深くする

トラゾドン塩酸塩錠は就寝後の高ぶりをしずめ、夜間に何度も目が覚めてしまう中途覚醒を減らすことにも期待できます。

結果として睡眠が途切れにくくなり、「眠りが浅い」「早朝に目が覚める」などの悩みの緩和に役立つ場合があります。睡眠の連続性が整うと、日中のだるさや集中しづらさも改善しやすくなるでしょう。

うつ病に伴う身体症状の改善を助ける

トラゾドン塩酸塩錠は気分の落ち込みだけでなく、抑うつに伴って出やすい食欲低下・だるさ・集中しにくさ・睡眠リズムの乱れなどの身体症状が総合的に軽くなることがあります。

気分面が上向くにつれて、食事や身支度、外出など日常の動きが戻りやすくなり、再発予防や社会復帰の前進にもつながり得ます。

効果は段階的に現れるため、自己判断で中断せず、定期受診と継続的な服用を心がけましょう。

トラゾドン塩酸塩錠の基本的な飲み方

トラゾドン塩酸塩錠の基本的な飲み方を紹介します。服用するタイミングや用量、効果を実感できるまでの期間などを解説するので、ぜひ参考にしてください。

服用するタイミング

トラゾドン塩酸塩錠は通常、1日1〜3回に分けて服用します。眠気が出やすい人では、就寝前の一回へまとめるなど時間帯が調整されることがあります。

毎日ほぼ同じ時刻に飲むことで、体内での濃度が安定し、効き方もぶれにくくなります。食前・食後の指定は処方に従いましょう。

胃の不快感が出やすい場合は、医師から食後投与を指示されることがあります。自己判断で時間帯を変えず、必要があれば受診時に相談してください。

服用する用量

トラゾドン塩酸塩錠は、少量から始めて体調や効果を見ながら段階的に調整するのが原則です。目標用量や調整の幅は年齢や他の薬、体質によって異なり、医師が個別に決めます。

成人の一般的な目安は、1日75〜150mgを1〜数回に分けて服用で、25〜50mg程度から始めることが多いです。必要に応じて1日300mgまで増量される場合があります。

効果を実感できるまでの期間

トラゾドン塩酸塩錠を飲み始めて数日〜1〜2週間で効果を感じ始める人がいます。

睡眠や不安の高ぶりが先に和らぎ、気分面の改善はその後についてくることが多いです。抑うつ気分の十分な改善には数週間〜数か月を要する場合があります。

飲み忘れたときの対処法

トラゾドン塩酸塩錠の飲み忘れに気づいたら、できるだけ早く1回分を服用します。次の服用時間が近い場合は、忘れた分は飲まずに通常のスケジュールへ戻してください。

飲み忘れた場合でも、2回分をまとめて飲むのは避けましょう。頻繁に忘れる場合は、アラームなどを活用しつつ、時間帯の見直しを医師に相談すると続けやすくなります。

トラゾドン塩酸塩錠の副作用

トラゾドン塩酸塩錠には、以下のような副作用があります。

生じる恐れがある副作用	症状の特徴
眠気・倦怠感	強い眠気や体のだるさ。服用初期や増量時に出やすい。※1
めまい・ふらつき／起立性低血圧	立ち上がったときにクラッとする。転倒や立ちくらみに注意。
口の渇き	水分をこまめにとると緩和しやすい。口の渇きにより虫歯や口内炎のリスクが高まる可能性があるため口腔ケアを行いましょう。
便秘	便が出にくくなる。食物繊維・水分で改善することがある。
悪心・胃部不快・食欲変化	吐き気、胃の重さ、食欲の低下。多くは数日〜数週で軽快。
皮疹・かゆみ	発疹、赤み、かゆみ。持続・悪化する場合は要受診。

※1：服用初期や増量時に出やすいですが、数日〜1週間程度で消失していくことが多いです。

トラゾドン塩酸塩錠に関する注意点

トラゾドン塩酸塩錠を服用する際には、押さえるべき注意点が5つあります。詳しく解説するので、理解しておきましょう。

服用中に関しては運転は避けること

トラゾドン塩酸塩錠は服用初期や増量時に眠気、ふらつき、判断力の低下が出やすい薬です。集中力や反応速度が落ちるため、服用直後の自動車・自転車の運転や高所作業、機械の操作は控えるようにしましょう。

就寝前投与に切り替えた直後も、翌朝の残眠感に注意が必要です。アルコールは眠気や血圧低下を強めるため併用は避けると安心です。強い症状が続く場合は、用量や時間帯の調整を医師に相談しましょう。

アルコールや他の鎮静薬との併用は控える

トラゾドン塩酸塩錠は眠気やふらつきを起こしやすい薬です。アルコールや睡眠薬、抗不安薬、抗ヒスタミン薬、鎮痛成分を含むかぜ薬などと一緒に使うと、眠気やめまい、注意力低下が強まりやすくなります。

量が多い場合や体質によっては、呼吸が浅くなるなど危険な副作用につながるおそれもあります。飲酒は控え、併用中の薬やサプリがある人は必ず医師や薬剤師に相談してください。

自己判断で減量・中断せずに医師の指示に従う

トラゾドン塩酸塩錠を服用して症状が落ち着いたとしても、急にやめると不安やめまい、眠れないなどの離脱症状が出ることがあります。

減量は少しずつ段階的に行うのが原則で、体調や気分の変化があるときほど独断で量を変えないことが大切です。再発や副作用を防ぐためにも、受診時に現状を共有し、医師の計画に沿って調整を進めましょう。

他の薬やサプリを飲むときは必ず医師に伝える

トラゾドン塩酸塩錠は他の薬との相互作用に注意が必要です。抗うつ薬（SSRI・SNRI・MAOI）、偏頭痛薬のトリプタン・リチウムなどを一緒に使うと、セロトニン症候群のリスクが上がります。

また、市販のかぜ薬や睡眠改善薬・抗ヒスタミン薬・サプリでも影響が出ることがあります。さらにCYP3A4に作用する薬は血中濃度が変わる場合もあります。

体調の変化を感じたら早めに相談する

トラゾドン塩酸塩錠の服用開始後に、強い眠気やふらつき、発疹やかゆみ、手足や顔のむくみなどの体調の変化を感じたら、早めに相談しましょう。

自己判断で中止せず、異変を感じた段階で医師や薬剤師に相談しましょう。独断で中断したり、副作用が出ているのに服用し続けたりすると、更なる体調悪化に繋がる恐れがあるため、注意してください。

トラゾドン塩酸塩錠の服用を避けるべき人の特徴

以前にトラゾドン塩酸塩錠で発疹などのアレルギー症状が出たことがある方は、原則としてトラゾドン塩酸塩錠は服用できません。

他にも、以下に該当する場合は医師と相談した上で、トラゾドン塩酸塩錠を服用するか慎重に検討する必要があります。

• 心筋梗塞の回復初期や心臓病のある人
• 緑内障・排尿困難・眼圧上昇がある人
• てんかんなど、けいれん性疾患の既往がある人
• 躁うつ病（双極性障害）の人
• 脳の器質障害がある人
• 統合失調症の素因がある人
• 衝動性の高い併存障害がある人
• 自殺念慮や自殺企図の既往がある人、24歳以下
• 出血傾向がある人
• 妊娠中・妊娠の可能性がある人／授乳中
• 小児・高齢者

トラゾドン塩酸塩錠に関するよくある質問

ここでは、トラゾドン塩酸塩錠に関するよくある質問に回答します。疑問や不安がある方は、服用開始前に解消しておきましょう。

トラゾドン塩酸塩錠の効果が出るまでどれくらいかかりますか？

個人差はありますが、抑うつや不安などの改善はトラゾドン塩酸塩錠の服用開始から数日～2週間ほどかかる場合が多いです。

十分な効果の判定には数週間かかることもあります。焦って自己判断で量を増減せず、医師の指示どおりに継続しましょう。

トラゾドン塩酸塩錠はどれくらいの期間飲み続けるべきですか？

トラゾドン塩酸塩錠を服用し始めてから症状が落ち着くまでには数か月かかることが多く、安定後もしばらく継続するのが基本です。症状が改善してすぐに中止すると再発しやすいため、医師と相談しながら用量を少しずつ減らします。

体調や生活リズムの変化に合わせて調整することもあります。自己判断で急にやめず、副作用や不安があるときは早めに受診しましょう。

トラゾドン塩酸塩錠に依存性はありますか？

トラゾドン塩酸塩錠は、依存性がきわめて低い薬とされています。ベンゾジアゼピン系のように、長く飲んだためにやめられなくなるタイプではありません。

ただし、急に中止するとめまい・不安感・頭痛・吐き気などの離脱症状が出ることがあります。医師と相談しながら数週間かけて少しずつ減らしていきましょう。

トラゾドン塩酸塩錠を服用すると太りますか？

一部の人で食欲が増える、体重が少し増えるといった変化が見られることがありますが、そのリスクは比較的低いとされています。

治療が進むと睡眠や気分が安定し、落ちていた食欲が元に戻る影響も考えられます。体重は週に一度ほど記録し、間食や夜食を控える、日中に軽い運動を取り入れるなどで調整しましょう。

トラゾドン塩酸塩錠の代わりになる市販薬はありますか？

現在、トラゾドン塩酸塩錠と同じ作用を持つ市販薬はありません。

トラゾドン塩酸塩錠は医師の診察と処方が必要な薬で、自己判断で睡眠改善薬やサプリに置き換えるのは危険です。症状や併用薬により逆効果になることもあります。

不安や不眠が続く場合は医療機関で相談し、自分に合う治療を選びましょう。日中の軽い運動や就寝前のスマホを控えるなど、睡眠衛生の見直しも併せて行うと効果的です。

まとめ｜トラゾドン塩酸塩錠について正しく理解しよう

トラゾドン塩酸塩錠は、うつ病・うつ状態の治療に用いられる抗うつ薬の1つです。神経間で働くセロトニンがゆっくり回収されるように作用し、気持ちを落ち着かせたり、眠気を誘ったりする作用が期待できます。

依存しにくく、処方されることの多い薬ではありますが、人によっては副作用が生じることもあります。副作用が出た場合は、必ず医師に申告して、継続するか判断して貰いましょう。

ぜひ、本記事の内容を参考にして、トラゾドン塩酸塩錠に関する理解を深めてください。

参考
トラゾドン塩酸塩錠添付文書
トラゾドン塩酸塩錠お薬のしおり