「集中したいのに、すぐに周りのことが気になってしまう」
「落ち着きがなくて、人間関係や仕事にまで影響している気がする…」
このような悩みを抱えている方に向けて、この記事ではADHD治療薬であるインチュニブ錠の特徴や、期待できる効果について分かりやすく解説します。
作用の仕組みや不注意・多動性・衝動性への影響だけでなく、眠気や血圧低下などの副作用、服用のポイントや注意点まで、インチュニブ錠を使う前に知っておきたい情報を網羅的にまとめました。
ADHDの症状で生活に困りごとがある方や、「薬を飲むのが少しこわい」と感じている方は、治療を検討する際の整理にぜひ役立ててください。
インチュニブ錠とは
インチュニブ錠は、有効成分グアンファシン塩酸塩を含むADHD(注意欠如・多動症)の治療薬です。
中枢神経を興奮させない「非刺激薬」に分類され、脳の神経伝達を落ち着かせることで、不注意や多動性などの症状を和らげます。
もともとは高血圧の治療薬として使われてきた成分で、血圧や脈拍を下げる方向に働く性質があるため、めまいや立ちくらみに注意が必要です。刺激薬が合わない方や心臓への負担を避けたい方に選ばれる薬になります。
刺激薬で副作用が強く出た方や、心臓への負担が心配で使いにくい方の選択肢として用いられることも多いです。
はなせる薬局 薬剤師なお、日本ではインチュニブ錠は先発薬として処方されており、現時点ではジェネリック医薬品は流通していません。
インチュニブ錠に期待できる効果
ここでは、インチュニブ錠に期待できる効果を4つ紹介します。
衝動性・多動性 の改善に役立つ
インチュニブ錠は、注意欠如・多動症(ADHD)の症状のうち、とくに多動性や衝動性が強い状態の改善に役立つことが期待されている薬です。ADHDの症状のうち、多動やじっとしていられない状態を和らげることが期待されている点が特徴です。
周りの音や出来事に気を取られにくくなり、目の前の作業に意識を向けやすくなる場合があります。その結果、落ち着きが出やすくなることで、周りに気を取られにくくなり、作業に取り組みやすくなる方がいます。
こうした変化によって、日常生活や学校、仕事での困りごとが少し楽になることが期待されます。
感情の波を穏やかにし、衝動的な行動を抑えやすくなる
インチュニブ錠は、ADHDでみられやすい感情が急に高ぶる症状を穏やかにし、衝動性を和らげることが期待されている薬です。
思いついたことをすぐ口に出したり行動してしまう前に、一拍おいて考えられる余裕が生まれやすくなるとされます。
イライラしたときに物を叩く、怒鳴るなどの反応が出にくくなり、日常生活のトラブルを減らす助けになる場合があります。
睡眠リズムの安定に寄与することがある
インチュニブ錠は本来睡眠薬ではありませんが、副作用として眠気が出やすい性質があり、この影響から睡眠リズムが安定しやすくなる場合があります。
医師の指示で就寝前の時間帯に服用すると、覚醒状態を鎮静させることで眠気が出るため、眠るモードに入りやすくなることがあります。
夜間にある程度落ち着いて過ごせるようになると、結果として睡眠のリズムが整うことがあり、日中の集中力や気分の安定にも良い影響が期待できるでしょう。



ただしあくまでADHDの治療薬であり、いわゆる睡眠薬とは位置づけが異なります。
インチュニブ錠の基本的な飲み方
インチュニブ錠の基本的な飲み方について解説します。服用する頻度やタイミング、飲み忘れた際の対処法を紹介するので、ぜひ参考にしてください。
1日1回、決まった時間に服用する
インチュニブ錠は、1日1回だけ服用するタイプの薬です。基本的には、毎日同じ時間に飲むようにするとよいでしょう。
眠気やだるさが出やすい薬のため、夜や就寝前に飲むよう指示されるケースが多いですが、実際にいつ飲むかは、生活リズムや副作用の出方などを踏まえて医師が判断します。
毎日決まったタイミングで続けることで、体の中の薬の濃度が安定しやすくなり、効果も期待しやすくなります。
少ない量から開始し、段階的に増量する
インチュニブ錠は、多くの場合は少量から飲み始めて、様子を見ながら少しずつ増やしていく薬です。
通常成人は1日2mgから開始し、症状の変化や副作用の有無を確認しながら、1週間以上かけて慎重に調整していきます。
必要と判断された場合には、1mgずつ段階的に増量し、年齢や体重、体調などに応じて最大で1日6mgまで増やすことがあります。



また本剤は、徐放性の薬剤であり、割ったり、砕いたり、すりつぶして服用してはいけないため注意するようにしましょう。
飲み忘れた際の対処法
インチュニブ錠を飲み忘れたことに気づいたら、飲み忘れた場合は医師または薬剤師に相談してください。絶対に2回分を一度に飲んではいけません。
飲み忘れが続くと効果が安定しにくくなるため、服薬カレンダーやアラームを使って、忘れにくい工夫をしていきましょう。
インチュニブ錠の副作用
インチュニブ錠の副作用として、以下が挙げられます。
| 生じる恐れがある副作用 | 症状の特徴 |
| 眠気 | 日中の強い眠気・集中しにくさが出ることがある |
| 低血圧・立ちくらみ | 起立時のふらつき、めまい、立ち上がり時の気分不良 |
| だるさ・倦怠感 | 身体が重い、疲れやすいなどの全身のだるさ |
| 頭痛 | 後頭部やこめかみの鈍い痛みが続くことがある |
| 口の渇き | 水分を摂りたくなる、口の中が乾く感覚が続く |
| 便秘 | 排便が固くなったり、回数が減ることがある |
| 腹痛・悪心 | みぞおちの痛み・吐き気・胃のムカつきなど |
| 不眠 | 服用時間が合わない場合に眠りづらくなることがある |
| 徐脈・頻脈 | まれに脈が遅くなる、または速く感じることがあり、だるさやめまいが現れることがある |
上記のような症状があらわれた際には、必ず医師に申告し、服用を続けるか判断してもらいましょう。
インチュニブ錠に関する注意点
インチュニブ錠に関する、注意点を紹介します。
即効性はなく、効果が出るまで時間がかかる
インチュニブ錠は、飲んですぐにはっきりした変化が出るタイプの薬ではありません。
少しずつ体に馴染んでいく薬のため、効果を実感できるまでに、少なくとも2週間から4週間、十分に効果が現れるまでには2ヶ月程度かかる場合もあります。
最初のうちは「本当に効いているのかな」と不安になるかもしれませんが、自己判断で中止したり、飲んだり飲まなかったりを繰り返すと、本来の効果が分かりにくくなってしまいます。



主治医の指示に沿って、決められた量をコツコツ続けて飲むことが大切です。
最初の1〜2週間は体調変化が起こりやすい
インチュニブ錠を飲み始めた最初の1〜2週間や、増量している時期は、体調の変化が出やすい時期とされています。
とくに眠気やだるさ、立ちくらみなどが起こりやすく、人によっては朝起きにくくなったり、ふわふわする感じが強く出ることがあります。
多くの場合、体が薬に慣れてくるにつれて、こうした症状は少しずつ落ち着いていくことが期待できますが、日常生活に支障が出るほどつらい場合は我慢しすぎない方が安心です。
水分をしっかりとる、急に立ち上がらないようにするなど、できる対策をとりつつ、気になる変化が続くときは早めに医師へ相談しましょう。
少ない量から段階的に増量する必要がある
インチュニブ錠は、少ない量から段階的に増やしていく必要がある薬です。
通常は1日2mgから始め、眠気や立ちくらみなどの副作用、症状の変化を見ながら、必要に応じて1mgずつ増量していきます。
いきなり高い用量を使うと、血圧の低下や強いだるさなどが出やすくなるおそれがあるため、初めから多めに飲むことは一般的には避けられます。
増量するかどうか、どのタイミングでどこまで量を増やすかは、診察での様子や生活への影響を踏まえて、医師が慎重に判断します。
アルコールや眠気の出る薬との併用に注意する
インチュニブ錠を服用しているときは、アルコールや眠気の出る薬との併用に注意が必要です。
もともと眠気やふらつき、血圧低下などを起こしやすい薬のため、お酒や睡眠薬、抗不安薬などと一緒に使うと、これらの症状が強く出て転倒や事故の危険が高まることがあります。
市販の風邪薬や酔い止め薬などにも眠くなりやすい成分が含まれている場合があるため、自己判断で飲み合わせを決めない方が安心です。



できるだけ飲酒量は控えめにし、普段より酔いやすいと感じたときは無理をしないことも大切です。
急な中止は避け、必ず医師の指示に従う
インチュニブ錠は、急にやめてしまうと血圧の変動や体調不良が起こりやすくなる薬とされています。そのため、中止や減量を行うときは、基本的に少しずつ段階的に量を減らしていく必要があります。
「だるいから今日は飲まないでおこう」「調子が良いから勝手に減らそう」という自己判断は、思わぬ不調につながるおそれがあるため避けた方が安心です。
副作用がつらいと感じるときや、やめたい気持ちが強いときこそ、一人で決めずに主治医へ相談しましょう。
インチュニブ錠を服用できない方
インチュニブ錠の成分(グアンファシン)に対して過敏症の既往がある方は、服用できません。また、妊婦又は妊娠している可能性のある女性や房室ブロックのある方も禁忌となります。
また、以下の症状に当てはまる方も、医師の判断によって服用できない場合があります。服用できるかどうかは、医師が慎重に判断します。
- 低血圧・立ちくらみが起こりやすい方
- 心不全・徐脈・伝導障害など、心臓の病気がある方
- 狭心症及び心筋梗塞等の虚血性心疾患のある方
- 脳梗塞等の脳血管障害のある方
- 抗うつ状態の方
- 腎機能障害または肝機能障害のある方
- 小児(6歳未満)
必ず正確に医師に申告し、判断してもらいましょう。
インチュニブ錠に関するよくある質問
ここでは、インチュニブ錠に関するよくある質問に回答します。
コンサータやビバンセとの違いは何ですか?
コンサータやビバンセは中枢神経を活性化させる刺激薬で、内服したその日から効果を感じやすい一方、食欲低下や不眠などが出やすい薬とされています。
これに対してインチュニブ錠は非刺激薬に分類され、脳内の神経伝達をゆるやかに整えることで、不注意や衝動性などを和らげることが期待されます。
効き目の立ち上がりは数日から数週間かけて少しずつ出てくることが多く、刺激薬と比べて依存性のリスクや、不眠の副作用が比較的少ない点が大きな違いとして挙げられます。
どちらが合うかは症状のタイプや体質、ほかの病気や服用中の薬によって異なります。



気になる場合は、これまでの治療歴や困りごとを伝えたうえで、主治医と一緒に選んでいくとよいでしょう。
他のADHD治療薬と併用できますか?
インチュニブ錠は、状況によっては他のADHD治療薬と併用されることがあります。例えば、コンサータやビバンセなどの刺激薬で注意力は改善しているものの、感情の波やイライラが強く残る場合に、インチュニブ錠を追加して調整することがあります。
ただし、刺激薬と組み合わせる場合は、眠気や血圧低下、動悸などの副作用が出ないかを慎重にみながら、双方の用量を細かく調整する必要があります。
ほかの向精神薬や持病の薬との飲み合わせも含めて、併用の可否は必ず医師が全体の処方内容を確認して判断します。自分の判断で薬を足したり減らしたりせず、併用について気になることがあるときは、そのままの状態で医師に相談しましょう。
インチュニブ錠は副作用がひどいって本当ですか?
インチュニブ錠は、眠気やだるさ、立ちくらみなどが比較的出やすい薬であることは確かです。とくに飲み始めから増量している時期は、朝起きづらくなったり、ぼんやりする感覚が出る方もいます。
ただし、多くの場合は体が慣れてくるにつれて、こうした症状が少しずつ落ち着いていくとされています。



まれに血圧低下や失神などの重い副作用が報告されていますが、診察ごとに血圧・脈拍数や体調を確認しながら用量を調整することが、安全性の確保に重要です。
まとめ|インチュニブ錠がどんな薬か理解しよう
インチュニブ錠は、ADHDの不注意や多動性、衝動性をゆるやかに整える非刺激薬です。脳内の働きを落ち着かせる作用があるため、刺激薬が合わない方や副作用が心配な方の選択肢になることがあります。
ただし、飲酒や眠気の出る薬との併用には注意が必要で、自己判断で量を調整したり急にやめたりするのは避けた方が安心です。また、効果がはっきり出るまでには数週間ほどかかることもあるため、焦らずに医師の指示に沿って続けるようにしましょう。
ぜひ、本記事を参考にして、インチュニブ錠に関する理解を深めてください。

